コントが始まる第1話 感想 ※ネタバレ注意
自分のことを疫病神と呼ぶ、運のない女。仕事もお金もないけど夢はある3人の男。だけど、10年経ってそれだけでは立ち行かない20代後半。
自分たちなりに努力してきたが芽が出ないマクベスの3人や、仕事がうまくいかず辞めてアルバイト生活をする里穂子は、世の中にたくさんいる私たちの中の一人です。
自分の失った青春の輝きをマクベスに見る里穂子のファン活動は、今流行りの推し活で、無味乾燥した暮らしを支える精神的な杖です。それだけでは生きていけないけど、現実を歩いていくときにどうにか支えてくれる杖。
マクベスの住む隣の部屋の内見までしてしまう行動は、一瞬ストーカーともとれる程ですが、そこまでのめり込む程、里穂子の生きにくさを表す尺度にも見えます。
このドラマは、よくいる大衆にうもれがちな若者を、登場人物たちの言葉のやりとりやエピソードを通して、瑞々しく痛いほどリアルに描かれています。
ファミレスの呼び出しベルについて、いくらでも議論できる子供のような好奇心の3人。
20代後半になっても学生のようなノリの潤平。
主食がポップコーンの瞬太。
お好み焼きをパンツ一丁で焼いている春斗。
10年経って売れなければコントを辞めるという約束について3人で話しあうシーンは、3人の本音がぶつかりあう印象的なシーンでした。
家業や彼女との結婚を考える潤平と、アルバイト先に正社員の誘いを受けている瞬太に対し、春斗は苛立ち「自分たちが売れてると思えば売れてるってことだろ」と論理の通らないことを言い出します。自分だけが取り残されたような惨めさと、売れないことへの負い目に葛藤する様子が伝わってきました。
そんな春斗に、青のりあるよ、と声をかけ絶妙に話をそらしながら、口論する春斗と潤平の間にスッと入り、次のオーディションの結果を落とし所にするという筋道をつける瞬太のやりとりなど、3人の本音とキャラクターが滲み出る秀逸なシーンでした。
そして、博多ラーメンを食べた春斗が解散を切り出すシーンは痺れました。いつ解散を切り出そうか迷っている春斗をみて、笑いながらも無念に泣く仲野太賀さんの演技は本当にジーンとしました。
里歩子のやり過ぎな推し活も、3人の行き場のないエネルギーや劣等感、不安も同世代には痛いほど響くドラマだろうなと思います。
そして、このドラマの凄いところは、冒頭からコントが始まり、そのコント自体がドラマ本編の伏線になっているという作りです。
脚本家の金子茂樹さんは、2019年に放送された生田斗真さん主演「俺の話は長い」でも30分2本立てという画期的なドラマ作りをし、向田邦子賞を受賞された脚本家です。ドラマ自体も登場人物たちの秀逸な言葉のやり取りで、見た後に心が満たされるようなドラマでした。
来週以降、春斗たちそれぞれの現実と古川琴音さんをはじめとする周りの登場人物たちの物語も描かれていくのでしょう。そして、それをコントという形に落とし込んで、コントにもドラマにも伏線とオチを付けていくという画期的なドラマづくりと、それに引けを取らない菅田将暉さんを初めとする超実力派俳優の演技に大いに期待です。
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