ナイト・ドクター第9話 感想 ※ネタバレ注意
ドナーとレシピエント、そしてその家族。1人の命が1人だけのものではないことの尊さを感じながら、臓器提供をめぐるそれぞれの気持ちには共感の嵐でした。そして、深澤が兄としても医師としても、また大きく一歩成長したようにも思いました。
もうすぐ退院だという時に急変した心美。手術は成功しますが、どうして心美ばかりこんな目にと嘆く深澤はナイトドクターを休職し、つきっきりで看病をします。そんな深澤に対して、「私の病気のことで我慢してきたと思うから、やっと見つけた好きな仕事を大事にして欲しい」と話した心美の言葉が美月の脳裏によぎります。この台詞からも心美はいつも自分を最優先に生きている兄に対して申し訳なさを抱えているんだろうなと感じていましたが、今回の心美の決断は自分はどうなってもいいから人のためというネガティブなものでなく、自分が生きて行くために行われていたのだと後に気付かされることになりました。
ドナーになりたいと打ち明けた心美に、深澤は、「絶対同意できるはずない。なんで死ぬことなんか考えるんだよ、諦めるなよ。」「体にメス入れて、お前の代わりに、他の誰かが生きるために、なんでそんなことする必要があるんだよ。」と猛反対。退院を前に体調を崩し、弱気になっているからそんなこと考えてしまっていると考える深澤の気持ちも、大切な家族である心美がドナーになるということへの拒否感も言われなくてもすごく良く分かります。特に、お前の代わりに他の誰かが生きるためにというフレーズは、唯一の家族である、かけがえのない心美を失いたくないと思う兄の気持ちが存分に溢れていました。
そんな2人の言い争いを聞いてしまった美月たち。実際に臓器提供を受けていた桜庭は、成瀬に悪気はないと気遣われながらも、これが臓器提供に対する本音だと気持ちが沈みます。ドナーあってこその臓器提供。臓器提供を受けて生きている桜庭からすれば、深澤の言葉はすごく刺さるものだと思います。後半部分にも、本郷に向かい「誰かの大切なものをもらって生きるほど立派な人間になれていない負い目があるのかもしれない」と話すシーンもあり、人からもらった命だからこそ、誠実に真面目に生きなければならないというプレッシャーを感じている様子はなんだか胸が痛くなり、臓器を譲り受けた桜庭だからこそ思う気持ちの切なさがありました。
心美の説得を求める深澤に美月は母のことを話し、心美には心美の考えがあるだろうから、説得は出来ないと続けます。母がドナーになることに同意した美月に対して無神経なことを言ってしまったと後悔しながらも、やはり深澤は心美がドナーになることはどうしても受け入れられません。そして、その後やって来た桜庭と言い合いになるシーンは臓器提供を悩む家族の思いが如実に現れていたと思います。
「あのカードを書いた途端、心美が死ぬのを待っている奴らがたくさんいると思うとゾッとする。」深澤がそんなことを感じてしまうのは、心美自身が死と隣り合わせだったからかもしれません。実際に、臓器提供が必要な患者さんからすれば、適合する臓器が巡ってくることを待ち望むことは何もおかしいことではないけれど、その行為自体が人が死ぬのを待っているのかと聞かれると、全く別のもののようにも思えます。
「気持ちをちゃんと聞いてやれ。」桜庭にそう言われた深澤は心美の病室へ向かい、後ろ向きに考える心美が理解できないと話しました。心美は「少しでも誰かの役に立ちたかった。ドナーになれることでこんな自分でも好きになれた。堂々と生きていたいからこれを書いた」と話しました。心美の若さでここまで考えられるのはすごく素敵なことだし、そう思えたのはきっと医師として働く深澤をいつも側で見ていたからだと思いました。
屋上へ集まった5人。そこで美月は母がドナーになった時の気持ちを正直に話しました。そして、レシピエントからサンクスレターが届くたび、お母さんのおかげで助かった人がいて、今も元気にどこかで生きている、そう思ったら悲しかったはずの過去がほんの少しずつ変わっていった。手紙が届くたびに優しかったお母さんがどこかで見守ってくれているような気がして寂しい気持ちがだんだん和らいでいったことを話します。ドナーになることで死んでしまったはずの母の面影を感じることが出来ること、それはドナーでしか感じられなかった亡き母の温かさだと思います。
「今はこのカードを残してくれたお母さんにありがとうって伝えたい」美月の言葉もそうですが、その言葉を聞いた桜庭のこみ上げる表情がすごく胸に響きました。立派な人間になれているのか負い目を感じると話していた桜庭でしたが、美月にこう感じてもらえていたと分かったことで救われたんじゃないのかなと感じました。自分がレシピエントだと名乗ることはできないルールだと成瀬も言っていましたが、美月がこの事実を知る日が来るのでしょうか。もし知ってしまったらどんな展開になるのか、すごく気になってしまいました。
そして、みんなの話を受け、深澤がついに決断を。「堂々と胸を張って入ればいい。だっていつか誰かの命を救うかもしれないんだから。」そう伝えながらも、すでに心美が生きているから、頑張れるんだと話す深澤の言葉は、いつもの優しい兄でしたね。ドナー云々ではなく、深澤の「それを使うときは訪れない、必ず良くなるんだから。」という願いが叶うことを願ってしまいます。
今回のテーマである臓器提供。ドナー側にもレシピエント側にも複雑な気持ちが生まれることが改めて分かりました。それは命が尊いものだからこそ生まれる課題であり、その時自分がその立場になるまではきっと気づけないものでもあったのかもしれません。そんな難しさと大切さを心美や桜庭、美月から同時に教えてもらえたように思います。
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