大豆田とわ子と三人の元夫第10話 感想 ※ネタバレ注意
愛に溢れた最終話でした。
前半は、とわ子の母・月子の恋文を通して、家族が愛し合うこと、素直に生きることが描かれていました。
医者を目指していたはずの唄は、自分ではなく彼氏の西園寺君が医者になることを応援することにします。自分の気持ちを大事にするより、現実的な可能性を優先する、それが楽に生きる方法と唄は思っています。
唄は、おばあちゃんの出せなかった恋文をみて、「おばあちゃんも、おじいちゃんも、ママもかわいそう」と言います。誰もが自分の気持ちを素直に表現できないまま、バラバラになってしまったから。
とわ子は母の恋文を見ながら、「全部捨てでも手紙を出せば良かったのに」とつぶやきます。母親が恋文をだして好きな人のもとに行けなかったのは、自分のせいだから、幸せを犠牲にしてまで家族に尽くすことはなかったのに。
幸せそうではない母親を見るのは、子どもにとっても辛いことでしょう。子どもは親を愛しているから、愛する人が幸せになるためなら自分を捨てても良かったと思っています。
そして、唄は言います。「おばあちゃんのラブレター届けようよ。おばあちゃんがママのことどう思っていたのか、おばあちゃんが不幸だったのか聞いてみようよ。」
「おばあちゃんの人生は私の未来かもしれないんだよ」
この言葉はすごく説得力がありました。
とわ子や、とわ子の父がずっと感じていることは、「自分が離婚したから、子どもを幸せにしてやれなかったのではないか」ということです。
親は必ずそう思います。子どもが不幸になれば、私の育て方が、与えた環境が、性格が影響したのではないか。自分の失敗を子どもも繰り返すのではないか。
そして、唄も例外ではありません。それをあの歳で悟っているのは、なんて賢いのだろうと驚きました。
コロッケを食べながらドアを開けたマーさんが画面に映った瞬間に、かごめに雰囲気が似ていると思ったのは私だけでしょうか。
ストレートにおばあちゃんとマーさんが恋人だったのと?と聞く、唄をみて、性別を越えて愛し合える関係をいとわずに口に出せる唄に感心していました。
女と男の関係が私の人生にはいらない、と言っていたかごめを思い出しました。
マーさんは続けます。
「大丈夫だよ。月子はあなたを愛していた。あなたのお母さんはちゃんと家族を愛していた」
じゃあ、どうして、ととわ子はつぶやきます。
「どうしてだろうね。家族を愛していたのも事実。自由になれたらって思っていたのも事実。矛盾している。でも誰だって心に穴を持って生まれてきてさ、それ埋めるためにジタバタして生きてるんだもん。愛を守りたい。恋に溺れたい。一人のなかにいくつもあってどれも嘘じゃない。どれも月子。」
「結果さ、家族を選んだってわけだし、正解だったんだから。正解だよ、こんな素敵な子供ができて、かわいい孫もできたんだから、良かったんだよ、私を選ばなくて」
とニコッと笑ったマーさんがとてつもなく素敵でした。
自分が選ばれなかった人生を、快活に肯定できる潔さを感じました。
そして、マーさんととわ子が笑っている姿を見て、唄は医者を目指すことを決めます。
人間は現実的で楽な方を選ぶだけが幸せではない、穴をもって生まれて、矛盾しながら、もがきながら生きるのもいいと思えたのでしょう。
最終回にして、とわ子の父の思いも吐露されました。
「あなたはすごいな、一人で立派になって。
お父さん何処いくの?って言ったのを覚えてるか。
お母さん何処いくの?って言ったのを覚えていか。
お父さんとお母さんがあなたを転んでも一人で起きる子にしてしまった。
お母さんは悪くない、俺のせいだ。」
父親は、自分が父親としての役目を果たさず逃げてしまったから、とわ子を孤独でも大丈夫な子に、離婚を繰り返してしまう人間にしまったと思っていました。
でも、とわ子は言います「今は一人だけどさ、田中さんも、佐藤さんも、中村さんもみんな私が転んだ時に起こしてくれた人だよ」「お父さんも支えだよ。今更でも自転車教えてよ」
父親はうれしそうに「うん」と言いました。父親ととわ子の呪いが解けたように思いました。
そして、最後の3人の元夫たちとのシーンは、愛に溢れたシーンでした。
英字新聞のおろそいのシャツを着る4人は、仲が良過ぎです。
そして大爆笑の「あなたが好きボーリング」。カーン、カーンと言いながら、とわ子の「好きボール」転がる元夫トリオが、最後まで茶目っ気にあふれていて可愛すぎでした。
いくつになっても、恋をしてああやってバカなことをできる素敵な大人になりたいなと思いました。
夢の中でも、夢から覚めても、三人の元夫たちは、とわ子のことが好きで、「大豆田とわ子は最高」ってことです!
そして、とわ子は言います。
「私の好きは、その人が笑っててくれること。笑っててくれたら後はもう何でもいい、そういう感じ」
結婚とか離婚とか、男とか女とか、一人とか孤独とか関係なく、とわ子の好き(=幸せ)はその人が笑ってくれるっていうこと。
網戸はだれかじゃなくて自分で治せればいいもの。
このドラマを通して、人が誰かを好きになって愛して生きるということを、いろんな側面から見ることができました。死別した親、子ども、親友、同僚、離婚した夫をどう関わって、愛せるのか。その答えが、相手が笑っていてくれることなんだと思いました。
坂元裕二さんの脚本の魅力は、言葉のセンスが抜群であることだと思います。登場人物たちは、みな個性を持ちながらも、共通して自分の気持ちを語る能力が飛びぬけて高いのです。
戸籍とか性別とかビジネス上の立場とか関係なく、人を知るために、愛するためには、当たり前のことかもしれませんが、言葉を交わすことが大事なんだなと思いました。
とわ子や慎森や鹿太郎のように、面白い比喩が怒涛のように出てくるのはなかなか難しいですが、それでも自分の思いを素直に表現することを私も大切にしていきたいなと思いました。
3か月間素敵なドラマを本当にありがとうございました。
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