『ある日~真実のベール』を視聴した感想とレビューです。なるべくネタバレなしで書いてるので、まだ見てない人も安心してご覧くださいね
キム・スヒョンの最新作とあれば見ないわけにはいかない♪そのぐらいの軽い気持ちで見始めたドラマでしたが、まぁすごい。
クオリティが完全に映画
全8話と、通常の韓ドラにしては短い作品ながら、韓ドラの売りである緻密な描写は顕在で、濃厚に描かれた映画を見ているよう。
主人公の目から希望が失われていく様子をキム・スヒョンが見事に演じてます。
混乱と困惑のなかで確たる真実さえも揺らいでいく大学生の姿を繊細な感情表現で見せていて、めちゃくちゃ引き込まれます。
キム・スヒョン以外の演技も素晴らしく、内容よりも役者の演技力に焦点が当てられているドラマです。

主要人物の演技が上手すぎる
おもしろいのは間違いないんだけど、想像以上に重くて救いがないから犯罪ドラマが苦手な人は見ないほうがいいかも。キム・スヒョンの笑顔もほぼありませんからね。
それではネタバレなしでレビューしていきますね
『ある日~真実のベール』ってどんなドラマ?
見に覚えのない殺人で一夜にして殺人犯となった大学生と、彼に手を差し伸べ、真実を追う冴えない弁護士の物語です。
警察と検察は無実を訴えるキム・ヒョンス(キム・スヒョン)を犯人と決めつけ、あらゆる手を使って犯人に仕立て上げていく、韓国司法の闇を描く社会派犯罪ドラマ。
裁判と刑務所内が中心で、検察・警察の偏った捜査、刑務所内でのいじめと権力争い、韓国ドラマ特有のネガティブ要素が満載です。
ただ、一方的に検察・警察が悪!というわけではなくて、
- 成果を出すため
- 出世のため
- たまたま誤った選択をした
- その時だけ魔が差した
- 生きていくため
生きていれば誰でもどの立場にもなり得るんですが、それがとても危うくて、ヒョンス側だけじゃなくて、それぞれの登場人物の立場に立ってみれば理解できる主張なんですよね。
裁判に限らず、自分の目標達成のために都合の良い部分だけを摘み取ってストーリーを作れてしまうものだから、社会って世知辛い。そんなことを考える作品でした。
ネタバレしないのであまり触れたくないですが、ミラクルも大どんでん返しも起きないリアル過ぎて余韻が残る終わり方もすごく良かった。
1話目から引き込まれ、ずっと前のめりで鑑賞してました。謎が多くて魅力的なキャラばかりで展開が気になって止まらない。
全8話で短いながらも緻密な描写で作られているので濃厚なんですが、気にならない点がなかったわけでもありません。
短すぎる弊害なんですが、サブキャラに魅力的な設定の人たちがたくさんいるのに深みが感じられないんです。
- 受刑者/ト・ジテ(キム・ソンギュ)
- 新人弁護士/イ・ソル(ソ・スジン)
- エリート弁護士/パク・ミンギョン(ソ・ジェヒ)
- 科捜研の元妻/ホン・ジョンア(キム・ヨンア)
普段の16話の韓ドラだったらもっと掘り下げてから活躍の場が与えられたはずなのに、そこは残念でした。
見応えたっぷりの法廷バトル
誰もが理不尽なことに遭遇するかもしれない偶然、正義と思い込むことの怖さ、残酷な現実を感じずにはいられません。
ヒョンス側の視点で物語が進んでいくので、犯人を無理やり作り上げる司法システム、ずさんな捜査、それによって恐怖、不安、焦り、絶望した姿の大学生を見ているのが苦しくて苦しくて。
その一方で、警察・検察側の主張は、人を見ずに証拠だけを信じ、犯罪被害者の代わりに犯人を絶対に許さないという強い意志が感じられ、賛同する部分も多くあります。
ヒョンスが殺害したという決定的な証拠がないなか、どうすれば自白するか試行錯誤して追い詰めていく手腕、それをさせない弁護士との攻防、見ていて凄みすら感じさせます。
アン検事は法廷で無表情で人格否定をしていくんですが、ヒョンスの至らなさを徹底的に突いて、正論でズバズバ指摘していく追い詰めていく様子は、被害者の関係者なら心強く見えるでしょうね。
犯人は最後の最後までわかりませんが、警察・検察の主張で「実はヒョンスが犯人なのでは?」と思うはずだし、最後まで緊張感が拭えません。
キム・スヒョン演じるヒョンスの変化
彼の演技力について今さら語るまでもないですよね。とにかく彼の演技力に圧倒されます。
セリフが少ないんですが、表情だけで繊細に表現する演技が素晴らしい。
ごくごく平凡で気弱な大学生が一夜にして強姦殺人の容疑者に。怯え泣き叫ぶ様や絶望した表情はさすがです。
「誰が犯人なのか」という考察系ではなく、キム・ヒョンスが犯人なのか、冤罪なのか。
キム・ヒョンスの表情や仕草、目つきがどんどん変化していくのに引き込まれます。
虚無感というか無力感みたいなものがずっと漂っていて、そこへキム・スヒョンの泣きの演技。終始やるせない気持ちになります。
泣くシーンが多いんですけど、どのシーンも泣き方が全然違っていて、その時のヒョンスの気持ちが痛いほど伝わってくるんですよ。
バイオレンスな刑務所生活の中で生きていくために変わっていく気弱な大学生。
その象徴がタバコでしたが、タバコを覚えてしまったヒョンスは、たとえ無実が証明されたとしても、もはや以前のヒョンスには戻れないんですよね。
それがセリフで提示されていたわけではないんですけど、演技で痛いくらい伝わってきました。
真の主人公?チャ・スンウォンの存在感
ヒョンス自身も、実は自分が犯人なのでは?と思い始めるなか、一貫してヒョンスの真実を信じて奮闘するのが三流弁護士のシン・ジュハン(チャ・スンウォン)。
このドラマの主役はキム・スヒョンではなく、チャ・スンウォンです。そう思わざるを得ないほど良かった。
『楽園の夜』の冷酷なヤクザのボスからの変貌ぶりには只々驚きます。
↑ これが ↓ こうですからね。
始めはアトピーの設定はここまで必要なのかな?と思ったけど、アトピー性皮膚炎の”常に痒い”というイライラ感、裁判が進むにつれて増えていく湿疹が、この裁判のもどかしさと難しさを表していたように感じます。
チャ・スンウォンって188cmあるんですよね。キム・スヒョンが小柄に見えてしまうほどの体格をしているのに、飄々とした佇まいで身体的な威圧感がまったくないのが凄いです。
彼は元々生きていくためにレベルの低い弁護を引き受ける三流弁護士。最初にヒョンスの弁護を引き受けたのも自分の利益のためだけだったはず。
ヒョンスの生真面目な性格を知るにつれ、彼の無実を信じて動くようになるんですが、諦めグセというか、めんどくさいことから逃げるクセもあるんですよね。
「司法に正義はない」がモットーだし。
娘の学校の職業体験授業で弁護士としての誇りを思い出していったり、徐々に顔つきが凛々しくなっていく様だったり、シン・ジュハン弁護士の心境の変化も見どころです。
サブキャラの魅力が伝わりにくいのが残念
監獄の王ト・ジテ、新人弁護士イ・ソル、シン・ジュハンの元妻ホン・ジョンアなど、魅力的な脇役が多かったのに、話数の短さゆえにキャラの深堀りができてなかったのが残念でした。
ストーリーの中でト・ジテがヒョンスに肩入れする理由はわかりますが、ヒョンスに何を期待しているのか、監獄の王に至る経緯などが見えにくいんですよね。彼だけで1話分は作れそうなキャラだけにモッタイナイ。
メインテーマはヒョンスの冤罪だからストーリー上は関係ないことだけれど、韓ドラは背景も緻密に描くのが特徴ですからね。
ただ、サブキャラの演技も本当に素晴らしいものでしたよ。
チンピラ役のヤン・ギョンウォンはとっても良かった。もう本当に憎たらしい(笑)
『愛の不時着』のピョ・チス、『ヴィンチェンツォ』のイ社長、”人のいい”イメージで勝手に補正してましたけど、それをあっさり裏切る狂気をまとってます。
ト・ジテ役はキム・ソンジュ。ノワール感たっぷりで凄みのある演技は見ごたえがありました。
というか、ト・ジテは何者なの?そこが気になりすぎて、もう少し詳しく描いてほしかった。
あと刑務所内の描き方が問題ありすぎ。
刑務所内でタバコ吸いすぎだし、リンチしてても刑務官は見て見ぬ振り、いくらなんでも刑務所内に刃物はありえないと思うけど...
まとめ
クオリティは非常に高い作品です。ハリウッドに肩を並べるレベルだと思います。
オープニングからの圧倒的没入感といい、ハリウッド並のカメラワークといい、編集・BGMはもちろん、演技も皆さん最高級。
最終回の「もうすべてが狂ってしまった」という絶望感がヒシヒシと伝わってくるラストは見てるこちらも胸が痛いし、冤罪について深く考えさせられます。
冤罪はここまで人を変えてしまうという事実を、キム・スヒョンの演技力で見せ切ってくれました。
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脚本 | イ・ミョンウ |
主要人物 | |
キム・ヒョンス | キム・スヒョン |
シン・ジュンハン | チャ・スンウォン |
検察 | |
アン・テヒ | キム・シンロク |
警察 | |
パク・サンボム | キム・ホンパ |
刑事 | ハン・ドンウォン |
刑事 | カン・ピルサン |
北部刑務所 | |
ト・ジテ | キム・ソンギュ |
パク・ドゥシク | ヤン・ギョンウォン |
接骨師 | ユ・ヒジェ |
キム・ヒョンスの家族 | |
パク・ヨンへ | キム・ジョンジェ |
ソ・へジョン | ホン・アギョン |
シン・ジュンハンの関係者 | |
ホン・ジョンア | ヨンア |
ソ・スジン | イ・ソル |
事件の関係者 | |
ホン・グクファ | ファン・セオン |
チョ・ガンピル | シン・ウチョル |
ユン・ヒョジョン | ナ・ウンサム |
オム・ギジョン | イ・プンウン |
イ・チョルホ | ファン・サンギョン |
ユ・スンフン | イ・スグァン |
パク・チャンヨル | ムン・スヨン |